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不可思議/wonderboy「不可思議奇譚 demo.ep」の感想

2010.02.27 | Posted in 音楽

wenodにて店頭販売、または、不可思議/wonderboyによって絶賛手売り中の6曲入りミニアルバム。メールでも受け付けているとのこと。

不可思議/wonderboy「不可思議奇譚 demo.ep」 2009年発売 不可思議/wonderboy「不可思議奇譚 demo.ep」

現実と幻想。こちら側と向こう側。向こう側の話が、「こちら側から独立した向こう側」として描かれた時の面白みはあるけれど、不可思議/wonderboyの曲(「銀河鉄道の夜」、「世界征服やめた」)をYouTubeで聴いた時、現実を入り口として幻想の世界へと引きずり込まれていく感覚がとても気持ちが良かった。それは、現実と幻想の距離感が絶妙で、加えて、現実として描かれている場面が自身の状況とリンクしたが故にその衝撃が強烈だった。この2曲を聴いて涙。これは心情の比喩でも何でもなく本当に涙ぐんだ。



部屋の片隅でたまりにたまった想いを消化するかのごとく吐露し続け、「バーモント・キッス」を口ずさみ、あきらめにも近い想いを交錯させる。そこに相対性理論による「バーモント・キッス」が流れてくる。この歌声が、張りつめる想いの詰まった部屋の扉をそっと開ける。ここからだ。そっと開けた扉の奥から出てくる想いの丈。最初から最後まで目を背けることができない程の想いに溢れている。本当に凄く良い。

実はこの曲、YouTubeのものとCDに収録されたものは、相対性理論による歌声が挿入される前までが少し違う。収録されたものは「少しずつ減っていくキリンストロングセブンと弱気な僕の自由な日々」と、本を読むように始まり、音質もどこかのステージ上でポエトリーリーディングしているかのような響きがある上、「バーモント・キッス」を口ずさむ場面が「口ずさんでいる」ではなく「歌っている」のだ。これはこちら側と向こう側の距離を離れさせてしまっている。それは最初に書いた「こちら側から独立した向こう側」的で、YouTube版で抱いた感情と同様のものを抱くことはできなかった。

M-1「talk about Spoken Words」、M-2「所信表明演説」では時に強気に「ストーリー一つも作れないような言葉に遊ばれるMCには負けない」と言い、時には自虐的に自身をTHA BLUE HERBのパクりとも言う。特にM-1では、詩人としてではなくラッパーとしての不可思議/wonderboyが見えて面白い。M-2では、アカペラで自虐的に勢いよく表明する。HIP HOPなんて大嫌いと言いつつ、言葉に重きを置き、丁寧というよりも危なっかしくも熱量を持ってラップ、ポエトリーリーディングをする姿がとても気持ちが良い。

3:30あたりから「所信表明演説」。


M-3「人殺しのカクテル」は、殺した恋人の幽霊とセックスをする話。M-4「タマトギ」は、南方の島を旅する旅人が魂を研ぐ老人と出会った話。いずれも不可思議/wonderboyがストーリーテラーとして繰り広げるわけだけれど、少しばかり熱量が邪魔になってしまった。不可思議/wonderboyの声は高いため、少しだけの熱量でも凄く息巻いているように聴こえてしまう。

M-5「銀河鉄道の夜」。今作品に収録された「世界征服やめた」と本曲は間違いなく今後も聴き続けることになるであろう凄い曲。男の夢である「銀河鉄道のレールを作る仕事」という、幻想そのものではなく、幻想への橋渡しをするための現実的な仕事が、この曲が持つ世界への間口をするりと抜け、自身の中一面に広げさせてくれる。また、このトラックの音使いが、宇宙の片隅で仕事をしている姿を容易に想像させてくれて、そこに展開される仕事をしている男からの手紙と、帰りを待っている女からの手紙のやり取りに、もはや涙無しで語ることなんて不可能だろうという想いに。



不可思議/wonderboyの声は高く、好みの分かれそうなところだけれど、発せられる言葉には間違いなく言霊が宿っている。どれもオリジナルトラックではないことから一般流通させられないのだろうけれど本当に勿体無い。wenodでは、コンピレーションアルバムの「言葉がなければ可能性はない―SpokenWordsConpilation2009―」が通販でも購入することが可能。こちらもいずれ聴きたいと思う。

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